報徳流地方創生事業
今、かつてない変化の時代が始まっています。
気候変動による災害、地震など自然現象を筆頭に、AIの台頭、働き方や価値観の変化など、分野によっては大転換を迫られています。
だからこそ、「今」。
各々の地域の人々が自分たちで古きを見直し、新しい取り組みを始めることが、これからを切り拓く鍵となると強く感じています。
そして、二宮尊徳翁が実践した「報徳」に、その大きなヒントがあると私たちは確信しています。
彼が生きた江戸末期、度重なる飢きんや災害、藩の財政状況などによって日本の農村は疲弊していました。人口が減り生産力が衰え、貧困のふちに追いやられた人々もいました。人心も、荒廃してゆきました。
――現代日本に通ずるものがあると思いませんか。
尊徳翁はこうした問題に真っ向から取り組み、財政改革と農村復興を成しました。
また、「心田開発」といって、人のやる気や心を耕すことを重視、状況を好転させていきました。
私たちは、今こそそうした彼の思想・方法論を学び、現代流に生かすことが必要だと考えています。
当館でも、平成30年3月~6月に報徳二宮神社で開催した「報徳流地方創生塾」に参画、全5回にわたる基礎認識セミナーでは、官民を超えて小田原市の抱える課題を共有したほか、他地域での実例とその分析、今も各地で活きる報徳の実践などを共有し、セミナー終了後には、小田原の地域活性につながるプロジェクトも動き出しました。
そしてこのたび、ここに「報徳流地方創生事業」を立ち上げることとなりました。
今まで以上に報徳を学び実践したい方々をサポートするとともに、報徳二宮神社をはじめ地域のみなさまと連携し、この小田原の地で報徳を実践・街の問題解決に寄与していきます。
まずは第一弾として、「報徳流地方創生塾」を開設いたします。
二宮尊徳翁と報徳の基礎はもとより、現代版報徳仕法のまちづくり事例のケーススタディ、報徳に基づく新規企画を立てるワークショップなど、知識の伝達だけではなくより実践的に体感的に学んでいただく場としていきます。
小さなことからひとつずつ積むことで、大きなことを為していく「積小為大」の精神で、1歩ずつ前に進んでまいります。
報徳流地方創生塾
次回開催について
2024年3月9日(土)~10日(日)
ゆくゆくは、新規事業や起業などより実践的な取り組みをフォローするような講座も開設していく予定です。
詳細は確定次第こちらのページ等でご案内して参ります。
開 催 報 告
2022年12月10~11日
コロナ禍で休止しておりました創生塾を、久しぶりに開催いたしました。
報徳仕法を学び、これを現代に置き換えて、参加者各自のプロジェクトに具体的に落とし込んでいく2日間となりました。

この日のスケジュール
●受付
●報徳二宮神社 開講奉告祭
●開会・主催者挨拶・趣旨説明・自己紹介など
●昼食(尊徳の食事:呉汁飯)
●ダイジェストで知る二宮尊徳の生涯と教え
●現代に生かす報徳メソッド
講師:木下 斉(AIAエリアイノベーションアライアンス)
●現在実践されている報徳仕法実例
●報徳仕法をテーマにした個人ワーク
●グループディスカッション
●休憩(宿泊先チェックインなど)
●芋こじ懇親会
◆2日目
●報徳仕法心得とりまとめ
●各自発表
●総括:今後の社会変容と令和の報徳仕法
●終了
*芋こじ懇親会とは?
二宮尊徳翁は桶の中に里芋と水を入れ棒や板でかき回すと、芋同志がぶつかりこすれ合って、汚れが落ちることから「芋こじ」と称して、仲間同士が自由闊達な意見交換を行いながら相互理解を深める場を設けていたことに由来します。当日は参加者みんなで懇親を深めました。
基礎から学ぶ

二宮尊徳翁のダイナミックな人生を振り返りながら、報徳の要素をしっかりお伝えしていきます。
実践から学ぶ

*内容に含まれない講座もございます。
脳に汗かき手を動かし、体感で学ぶ
ワークショップ形式で、実際にプランを立て、その場でフィードバック。
体感で「報徳」を学びます。
*内容に含まれない講座もございます。
実現を見据えて学ぶ
小さなことからでも、実際の暮らしや仕事、地域の活動などに生かしていただきたいと願っています。
ゆくゆくは、見込みのある事業をサポートする起業講座の開設も予定しています。
二宮尊徳や思想・方法論について基本から学ぶことができる講座です。
法人・団体の研修など、ご希望に応じてアレンジすることも可能ですので、お気軽にご相談ください。
*講座の内容等、変更になる場合があります。
2日コース
2日目は、報徳仕法ワークショップと遺跡めぐりのいずれかをお選びいただきます。
座学だけでなく、実際のワークを通して体感で「報徳」を学んでいただけます。
□1日目
10:00 金次郎の一生
12:00 休憩 ※呉汁セット
13:00 後半生
16:00 終了
□2日目
Aコース 現代のまちづくりに活かす
10:00 報徳仕法の現代への活かし方
ケーススタデイ~実践例から学ぶ~
12:00 休憩
13:00 報徳ワークショップ
自分たちの町の計画立案
16:00 報徳二宮神社にて修了奉告祭
Bコース 遺跡めぐり
10:00 尊徳記念館集合
尊徳記念館~生家~飯泉など
16:00 報徳二宮神社にて修了奉告祭


※画像はイメージです。
1日コース
1日で二宮尊徳と報徳の基本について学ぶことができます。
10:00 金次郎の一生
12:00 休憩 ※呉汁セット
13:00 後半生
16:00 報徳二宮神社にて修了奉告祭

半日コース
10:00 金次郎の一生
報徳の基本
12:00 報徳二宮神社にて修了奉告祭
新しい公民連携・ソーシャルビジネスにむけて
少子高齢化が年々顕著となり、医療や介護、福祉・育児・社会保障などの予算が増大、財政的にも厳しい時代を迎えるこれから。
これまでの手法が通用しなくなるなか、私たちは未来に向けて、今、真剣に動き出すべきだと思います。
私たちは、報徳思想と報徳仕法を基本にした、「人・もの・お金を地域でまわす」新しい「公民連携」や「ソーシャルビジネス」がその一助となると考えています。
自分たちの町の未来を見据えた時に、補助金などの財源をあてにせず、公(行政)と民(民間)が一緒に考え町全体でいかに収入を増やし・いかに支出を減らすかということが重要な課題となるからです。
それはまさに、小田原藩からの援助を断り、見事桜町領を立て直した二宮尊徳翁の「報徳」の本意であり、手法なのです。
時代は刻一刻と変化しています。
よりよいまちづくりのために、私たちは新しい「公民連携」や「ソーシャルビジネス」を推進していきます。
□公民連携とは?
公(行政)と民(企業・団体)が連携して公共サービスの提供を行うスキームをPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)と呼ぶ。PFIは、PPPの代表的な手法の一つ。PPPの中には、PFI、指定管理者制度、市場化テスト、公設民営(DBO)方式、さらに包括的民間委託、自治体業務のアウトソーシング等も含まれるとされるが、まだ完全明確な定義は成されていない。
□ソーシャルビジネスとは?
別名:社会的企業 英語:Social business
利益を追求するのではなく、社会的貢献を第一の目的として営まれる企業活動。一般的に、従来の企業は、最大限の利益を追求することを目的として活動している。ソーシャルビジネスは環境問題や国際的な貧困の問題といった社会的問題の解決、社会貢献を第一の目的とし、そのための費用を回収するために利益を上げるものである。
ソーシャルビジネスのため立ち上げられたベンチャー企業は、特にソーシャルベンチャーなどと呼ばれる。また、ソーシャルビジネスを立ち上げた起業家はソーシャルアントレプレナーと呼ばれる。いずれも、知識労働者(ナレッジワーカー)による社会貢献活動を指す「プロボノ」と共に、2011年2月現在、注目を集めつつある。
グラミン銀行の創始者で、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌスも、ソーシャルビジネスのあり方を提唱している。
<引用 Weblio辞書>
「後の世のために 樹をうえるのが 人の道である」
―Sustainable Development―
後の世のために 樹をうえるのが 人の道である―とは二宮尊徳翁の言葉で、
「自分が生きているうちに立派な林にならぬことがわかっていても、親は子のために樹を植えるのである。眼先の欲だけで動くのは動物である。子孫後世のために、徳の種子をまくのが、人の人たる所以である。」
と言っています。
この言葉に表されるように、彼は目先の利益を追求するのではなく、長期的な計画を立て実行しました。
また補助金を排し、各々の地域の力で復興・発展をさせていきました。
この在り方は、現代の「持続可能な開発(Sustainable Development)」に通じるものがあります。
これは、1987年に環境と開発に関する世界委員会が「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」として彼らの報告書の中で中心的な概念として取り上げたもので、環境と開発を互いに反するものではなく共存し得るものとしてとらえ、環境保全を考慮した節度ある開発が重要であるという考えのことです。
2016年にはその実現と世界の諸問題の解決を図るべく「持続可能な開発目標(SDGs)」が制定され、世界的な取り組みが始まっています。
さまざまな分野で「Suatainable(持続可能)」であることが求められている今、二宮尊徳の思想や方法論は過去のものではなく、現代流に生かすことで、持続可能な自立した町や地域づくりに役立つ知恵であるといえるでしょう。
<参考>外務省ホームページ、国連開発計画ホームページ